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次回展覧会

両 国

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長沢 秀之|『「C通信Ⅱ」ネクロポリ- 島』
2024年6月1日(土) -  7月6日(土)
​オープニングレセプション:6月1日(土) 17:00 - 19:00

11:00 - 19:00 日曜・月曜・祝日休み

 GALLERY MoMo 両国では、2024年6月1日(土)から7月6日(土)まで長沢秀之の個展『「C通信Ⅱ」ネクロポリ- 島』を開催いたします。
 本展は、2022年の個展『「C通信」— 目の記憶 -』の続編となる展示で、長沢がコロナ禍で見た夢をもとに描いた鉛筆ドローイングを写真に撮り、さらにPhotoshopで加工し、高機能プリンターでプリントアウトするという過程を経て展開してきた作品の展示となります。
 前回の作品では“オレたち”がひとウサギに「ここは死者のこたつです。オマエらはここに入れない。なぜならボディをもっていないからだ。早く出て行け!」と言われ、あちこちさまよう中で、死者の世界、時空を超えた世界に入っていくという構成で制作されました。しかし、本展では、はじめから死者の街であるネクロポリに入っていく場面が描かれています。
長沢によれば、以前何回か訪れたことがあるイタリア、タルキニアのネクロポリの記憶が、ウクライナやガザの戦争とともに蘇ったと言い、前回の展示が、COVID-19からの『なぞかけ』に応えようとするものであったように、今回は戦争や死が『なぞかけ』として作品に反映されています。
今回展示する作品には、死者に関連する記述やモチーフとして石が頻繁に取り上げられ、実際の石も展示される予定です。その中で、「…死者と石は平等である」という言葉と共に「もっともめざましいのは、そのとき死者が生者とともにいることだ」(C通信119-1)と述べられているように死者の存在が大きなテーマとなっています。
 そして、もうひとつの大きなテーマとして長沢は「ボディ」について描き、言及しています。これは単純な肉体回帰的な意味でのボディではなく、現代にあって消えかかっていく肉体が、常に死者の側から見つめられ、石、珊瑚、地層から問いかけられています。そして“オレたち”が最後にたどりつくのが記憶島(きおくしま)であり肉体の島でもあることに「ボディ」の意味が表れていることでしょう。
 今回も、実際に紙に描いたドローイングは一点も展示されていません。しかし、作品として展示されている顔料インクのマット紙も、パソコンやスマホで見る透明な画像とは違ってひとつのボディとして区別されていることは明らかです。長沢にとってそれは人間の手(文字通りのボディ)とデバイスの手(もうひとつのボディ)による結合の結果でもあるのです。また、展示される一点の絵画は、世界を構成する粒子に関連したものであり、石を構成する粒子ともつながっています。これは前回の展示で提示した回析格子(構造色)へのひとつの応えにもなっています。

 前回、山本和弘氏に寄稿していただきましたが、今回は、椹木野衣氏の寄稿を得て、カタログを完成させました。会場にてお手に取っていただき、一つの作品として展示と共にご高覧いただけましたら幸いです。

 

 

 長沢秀之は1947 年埼玉県生まれ、72 年武蔵野美術大学卒業後、映画制作などを経て、79 年から美術作家として本格的な活動を 始め、ギャラリーや美術館で絵画作品の発表を続けてきました。また2018 年まで武蔵野美術大学油絵学科で若手作家の指導、育成 にあたり(現在、同大学名誉教授)、2018 年からは神戸芸術工科大学の客員教授としても学生の制作指導に取り組んでいます。

 初期作品の「風景-◯◯」シリーズでは、ひとが存在しうる「風景」を追求し、そこから見ることの仕組み(メガミル)や描かれ るものの大小と遠近の問題などを提起する作品を発表し続けてきました。  

 2000 年から進めてきたドットによる作品の皮膜シリーズでは、2次元の平面に奥行きが生じるという絵画の原初的疑問に応えよ うとしています。一方で2014 年の当ギャラリーで発表の「絵画の中のあらゆる人物は亡霊である」展、ドローイング+文章の「心 霊教室」展、2017 年の「未来の幽霊」展などは、画像がもつ人間とは別の視覚の解釈に絵画の奥行きを重ね、空間だけでなく時間 や記憶の問題も提起してきました。       

 また、1954 年の映画「ゴジラ」への敬愛から始めた学生とのコラボレーションによる「大きいゴジラ、小さいゴジラ」展は、ビ キニ環礁での米国の核実験の被爆と福島原発事故を結びつけ、深刻な問題と制作の楽しさが混じった展示として、いくつかの美術館 でも展示され、大きな反響を呼びました。さらに2015 年から続く「対話『私が生まれたとき』」は、奄美や神戸の住民との対話を 通して生まれたプロジェクトで、ドローイングとことばによる展示のかたちは今回の「C 通信」シリーズにつながっています。

1947    埼玉県に生まれる
1972    武蔵野美術大學造形学部産業デザイン科卒業
1999    武蔵野美術大学油絵学科教授
    2018年3月まで武蔵野美術大学油絵学科教授、神戸芸術工科大学客員教授(2018年〜2022年)、武蔵野美術大学名誉教授
   
[主な個展]        
1981    銀座絵画館 ( 東京)[ '82]
1982    鎌倉画廊(東京)[ '83]
1984    西武百貨店渋谷店美術画廊(東京)
           ギャラリーヤマグチ(大阪)
1985    ANDO GALLERY( 東京)
1986    イノウエギャラリー(東京)
1989    FBCギャラリー( 福井)
1992    ギャラリーNWハウス( 東京)[ '92]

1993    スカイドア・アートプレイス青山 ( 東京)
      南天子ギャラリーSOKO ( 東京)[ '95]
1998    網走市立美術館 ( 北海道)
1999    南天子ギャラリー ( 東京)
      村山画廊 ( 東京)[ '01]
2000    川越画廊(埼玉)[ '03, '07, '08]
2004    GALLERY MoMo(東京)[ '06, '08 ]
2005    ART TRACE GALLERY(東京)[ '06, '08 ]
2008    川越市立美術館(埼玉)
2012    GALLERY MoMo Ryogoku (東京)
2013    RED AND BLUE GALLERY(東京)
2014    GALLERY MoMo Ryogoku (東京)
2017    武蔵野美術大学美術館(東京)
2018    田中一村記念美術館展示企画室ー奄美パーク(沖縄)
2019    原爆の図 丸木美術館(埼玉)
2021    KIITO ギャラリーC(兵庫)
2022    GALLERY MoMo Ryogoku (東京) 
   
[主なグループ展]    
1989    「現代美術への視点 色彩とモノクローム」東京国立近代美術館  ( 東京)・京都国立近代美術館(京都)
1990    「ART TODAY 1990一複製技術時代の芸術復興」軽井沢財団法人高輪美術館(現セゾン現代美術館) (長野)
1991    「色相の詩学一現代美術・平面からのメッセージ」川崎市市民ミュージアム ( 神奈川)
1994    「3rd.北九州ビエンナーレ クイントエッセンス」北九州市立美術館(福岡)
1995    「現代美術への視点絵画 唯一なるもの」東京国立近代美術館  ( 東京)・京都国立近代美術館(京都)
1997    「オーペラ・アペルター 開かれた作品の詩学」セゾン現代美術館(長野)
1998    「人間と風景 -近代日本美術の名作-」東京国立近代美術館  (東京)
1999    「呼吸する風景」埼玉県立近代美術館(埼玉)
2004    「戦後美術、俊英のきらめき」川越市立美術館(埼玉)
2009    「サイボーグの夢 -なぜ絵画はSF的なのか?」アートトレイス・ギャラリー(東京)
      「絵の力-絵の具の魔術-」展 武蔵野美術図書館+ギャラリー (東京) 
     「眼を閉じて -見ることの現在-」展 茨城県近代美術館(茨城)
2010    「水のいろ、水のかたち」高松市美術館(香川)
2011    「画像進化論」栃木県立美術館(栃木)
2012    「Relation: 継がれるものー語りえぬもの」武蔵野美術大学美術館 (東京)
      「ムサビる—大きいゴジラ、小さいゴジラ」School Art Project 小平第二中学校 (東京)
2013    「「ワカラナイ」ノススメ」茨城県美術館(茨城)
      「プレイバック・アーティスト・トーク展」東京都国立近代美術館(東京)
      「心霊教室-Psychic room-」 東大和第五中学校(東京)
2014    「「大きいゴジラ、小さいゴジラ」展」川越私立美術館(埼玉)
      「第五福竜丸ゴジラ展」原爆の図 丸木美術館(埼玉)
2015    「ゴジラと福竜丸〜想像力と現実」 東京都立第五福竜丸展示館(東京)
      「Otherworld  長沢秀之・赤塚祐二・額田宣彦・森北伸」ティル・ナ・ノーグ ギャラリー(東京)
2017    「ゴジラ考「大きいゴジラ、小さいゴジラ」から」 武蔵野美術大学 FAL(東京)
2018    「繰り返しの極意」もうひとつの美術館(栃木)
      「コレクションによる小企画 遠くへ行きたい」東京国立近代美術館(東京)
      「ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代」 国立国際美術館(大阪)
2022    「PER AMICA SILENTIA LUNAE 月の沈黙を友として」ティル・ナ・ノーグ ギャラリー(東京)

   
   
[ パブリックコレクション ]    

東京国立近代美術館
セゾン現代美術館
大原美術館
京都国立近代美術館
高松市美術館
川越市立美術館
茨城県近代美術館
栃木県立美術館
網走市立美術館
武蔵野美術大学美術館
広島市現代美術館

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