開催中の展覧会
六本木|プロジェクツ

鴻池朋子のストラクチャー
2023年5月23日(火) - 6月24日(土)
12:00 - 19:00 日曜・月曜・祝日休み
※六本木アートナイト開催中は営業いたします。
5/27(土):12:00 - 22:00
5/28(日):12:00 - 18:00
● 筆談トークイベント「Dialog Journey」 木下知威と鴻池朋子による筆談トーク|5月28日(日) 16:00 - 18:00
※入場無料・予約不要(混雑状況によっては入場制限する場合もございます。あらかじめご了承ください。)
● 朗読会とトーク|6月24日(土) 15:00 - 17:00
※詳細等決まり次第お知らせいたします。
GALLERY MoMo Projects(六本木)は、六本木アートナイトに合わせ5月23日(火)から6月24日(土)まで鴻池朋子個展『鴻池朋子のストラクチャー』を開催致します。
これまで高松市美術館、静岡県立美術館で開催した『みる誕生』で、鴻池は作品を美術館の外にも設置し美術館と往来させることで来館者に身体を使って鑑賞してもらうような展覧会の構成を作ってきました。
違う場所に設置された作品は、全く違う作品のように見え、違う環境で見ることで感じることに変化があり、目で見ることだけが「みる」ことではないと言うことを感じさせる展示となりました。また、高松で展示されていた地質調査のボーリング資料や美術館の古い設計図を見せることで、来館者が実際に立っている場所の秘密を見たような気持ちを与え、ワクワク感とドキドキ感を経験させました。
本展では、六本木アートナイト期間中に新国立美術館、ミッドタウン両会場に展示でされている作品とギャラリーを往復しながら、鴻池がこれまで作ってきた展覧会の構造を垣間見るような資料や作品を展示する予定です。
また、聾者でもある歴史学者の木下知威氏との往復書簡や、大型作品のインストール作業映像、各美術館の展示向けた構想スケッチなどを展示し、さらに『深度図書館』と名付けられた読書スペースを設置し、これまでの書籍や資料をじっくり読むことができます。
「小径が開くと、そこを介して素材自体が、かくありたいと思っていた形を伝えてくる。構造とは、その形に少し骨を添えてやるようなこと。」と語るように、鴻池は自分自身の中にある固定概念を捨て素材から何か語りかけてくるまで待ちながら、素材のあるべき姿を探っています。構想スケッチや往復書簡など言葉を通して、彼女自身が素材の中に感じたユニークな視点、そして「少し骨を添えて」いく過程を垣間見ることができるでしょう。
六本木の雑踏から離れた静かなギャラリーで展覧会や作品ができるまでの過程をじっくりと見ることで、これまで鴻池が高松、静岡での展示で試みてきたこと、また来年開催される青森県立美術館での試みへバトンを繋ぐ中継地点になるような展示になります。
会期中にはイベントも予定しております。ぜひお立ち寄りください。
鴻池朋子のストラクチャー
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ある盲人が山の小径を歩いている。
この道は半島を八巻状に一周する周回路で、歩いていれば自ずとまた登山口に戻ってくる。人ひとりか二人並んで通れるほどの道には、シダやヤマツツジが生い茂り、足元は長年堆積した枯葉でふかふかで、崖側に潮騒、遠く上の方ではトンビが鳴いていた。そうやって匂いを辿って、ようやくあのヤマモモの木にたどり着いた。
ヤマモモは初夏を迎える頃、葉っぱの付け根に真っ赤な実をつける。甘酸っぱくて大層美味しく、この実を食すのはこの時期の唯一の楽しみだ。濃く熟した実は、そこら中に落ちて芳香を放っていた。
手で小枝をつかみ口元へ持ってきて、唇で実を探っていくと、何か硬いものが歯に触れて小さくカチンと音がした。カタツムリだった。
それによって彼女の環世界が壊されて、突然外界との通路が開かれた。同時に長年のカタツムリの環世界も壊された。振動とともにカタツムリがこちらの体に流れ込んでくる。こちらも蝸牛へ溶け込んでゆく。
例えるなら、私にとっての素材/画材との出会いとは、このようなことのように思う。
小径が開くと、そこを介して素材自体が、かくありたいと思っていた形を伝えてくる。構造とは、その形に少し骨を添えてやるようなこと。骨組みの梁のスパンを広げていくことではない。
鴻池朋子
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<鴻池 朋子 プロフィール>
玩具や家具のデザインに携わり、1997年より絵画、彫刻、パフォーマンス、アニメーション、手芸など、様々なメディアを用い、トータルインスタレーションで作品を発表。旅で出会った人々の「語り」からつくられる「物語るテーブルランナー」プロジェクトや、天候や時間をも巻き込む、サイトスペシフィックな屋外の作品も各地で展開。また、おとぎ話、考古学、人類学など、様々な分野と学際的にセッションを重ね、芸術の根源的な問い直しを続けている。2017年、芸術選奨文部科学大臣賞受賞、2023年紫綬褒章受賞。
こうのいけ ともこ
1960年秋田県出身。東京芸術大学絵画科日本画専攻卒業。
主な個展に、2006年「第0章」大原美術館、2009年「インタートラベラー 神話と遊ぶ人」東京オペラシティアートギャラリー(霧島アートの森・鹿児島巡回)、2011年「獣の皮を被り 草の編み物」ギャラリーヒュンダイ(韓国)、2013年「Earthshine」ウェンディ・ノリス ギャラリー(アメリカ)、2015年「根源的暴力」神奈川県民ホール(2016年 群馬県立近代美術館、新潟県立万代島美術館巡回)、2018年「ハンターギャザラー」秋田県立近代美術館、「A fairy tale passing through the fur」 Leeds Arts University(イギリス)2020年「ちゅうがえり」アーティゾン美術館、2022年「みる誕生」高松市美術館、静岡県立美術館、2024年青森県立美術館にリレー予定他。
主なグループ展に、2008年「広州トリエンナーレ」(中国)、2010年「釜山ビエンナーレ」(韓国)、2016年「Nousぬう」金沢21世紀美術館、「Temporal Turn」スペンサー美術館・自然史博物館(アメリカ)、2017年奥能登国際芸術祭(石川県)、「Japan-Spirits of Nature」ノルディックアクバラル美術館(スウェーデン)、2018年 「ECHOES FROM THE PAST /The Artists’ Kalevala」シンカ美術館(フィンランド)他、2019年、2022年瀬戸内国際芸術祭(香川県)、2022年「Story-makers」シドニー日本文化センター多数。
著書に絵本「The world of wonder〜焚書」、「根源的暴力」、「どうぶつのことば」(共に羽鳥書店)他。